TOPICS

ALL TOPICS

2020.11.16

#INFO

回想 それぞれの世界選手権 最終回〈全6回〉 佐藤瞳(2017年8月号から)

  • カットマンという希少な戦型で世界に挑む

昭和22年創刊、800号を迎えたニッタクニュースのバックナンバーから編集部がピックアップしてお届けするページです。

 

2017年世界選手権デュッセルドルフ大会(個人戦)に、日本代表として出場した石川佳純森薗政崇伊藤美誠早田ひな田添健汰佐藤瞳の各選手が大会を振り返る「回想 それぞれの世界選手権」。
最終回は佐藤瞳選手(ミキハウス)です。
世界選手権を通して見えた、これからの課題や目標を語ります。
*所属・年齢は当時のままです。
*ここに紹介の記事は、本誌記事を一部抜粋、編集しています。文中敬称略
本誌記事ページはこちら!

世界で通用するカットマンになるために

 

「カットマン」。台から距離を取り、相手の強打を何本も拾い、ミスを誘う。コートを颯爽と動く姿は美しく、また相手の強打を拾う姿は、観客の目をくぎ付けにする。今や日本屈指のカットマン、佐藤瞳が世界選手権初参加を振り返る。
近年、カットマンは、拾う、という技術だけなく、『攻撃』『反撃』という技術が必要になってきている。拾うだけでも豊富な運動量が必要であるのに、攻撃という要素を踏まえてプレーしなければならず、1試合ごとに相当な体力と頭を使う。ダブルスランキングでは、世界1位、シングルスのランキングにおいても世界12番目に入っている(2017年6月発表)。

 

「カットマン」という特殊な戦型
2017年に入って、ワールドツアー2大会(タイ・クロアチア)で優勝。その他の大会でも、好調なプレーが続いていた。
しかし、攻撃タイプと比べて、カットマンという特殊な戦型ゆえに、練習法などが複雑である。
卓球という競技は、点数を競う競技である。ボールの速さ、威力だけを競う競技ではない。簡単に言ってしまうと、相手より1本でも多く返球する、相手よりミスを少なくすれば良いのである。そういう意味では、カットマンは、相手に喰らいつき、相手より1本多く返球し、ミスをさせればよいのである。

 

ミスの少ないカットで粘り強く戦った

 

「世界選手権はずっとテレビで観ていました。私にとって憧れの大会でした。オリンピックが一番大きな大会、とすると世界選手権は2番目に大きな大会。ずっと目標にしていた大会でしたので、ワクワクしていました」
憧れの舞台ということもあってか、若干の緊張があった、と振り返った。緊張感があったものの、調子は悪くなく、しっかりプレーできた、とも話した。
「実際に出てみてわかったことなんですけど、ワールドツアーに出ているメンバーがほとんどなのに、世界選手権になると、雰囲気が違うというか『気持ち』の入り方が全く違う、と感じました。どんなに点数が離れていても諦めないし、1本も捨てない、諦めない、という感じ。この経験は、今後の私の卓球人生において、とても大きなことだと思います」
シングルスに出場。しかし3回戦でサマラ(ルーマニア)に敗れてしまい、日本女子の中では一番早く敗戦が決まってしまう。
「いつもの自分よりも良い試合ができたとは思います。でも負けてしまった。悔しいです。しかし、それが今の実力なんです。世界選手権で感じた雰囲気、負けてしまった事実を絶対に忘れてはいけない。ここから努力をし続ける。この感覚が大事なんだと思います」
負けず嫌いの性格。佐藤は敗戦が決まるも、大会が終わるまで、練習会場で練習を続け、次の目標に向かっていた。
「日本選手の試合を観ていて、まだあの舞台で試合をしたい、と強く思っていました。
世界選手権前は、前後左右、守備範囲が広くなるような練習をたくさん取り入れました。その練習は効果的で、普段より、2本、3本多く拾えた気がします。
ただ、守備的になりすぎて、攻撃的にプレーできなかった。攻撃的といっても、ドライブとかの攻撃ではなく、ツッツキであったり、変化を多くしたカットであったり、攻撃的なプレーということです。いくら練習しても、大事な場面で使えない。『心技体』の心の部分。技術を使える『心』がないとダメなんだな、と思います」

 

自身のプレースタイルを信じてメダルを目指す

 

卓球人として素晴らしく

13年に、【213位】で、初めての世界ランキング入り。そして17年4月には一桁の【9位】に。わずか4年ちょっとであるが、急上昇を果たしている。
「世界ランキングも上がり、たくさんの方が応援、注目してくださっていると思います。ですから、結果だけでなく、立ち居振る舞いというか、私生活も気にしています。卓球も素晴らしく、人間的にも素晴らしい。そうしていきたいと思います。
私はカットマンという戦型。世界でいうなら少ない戦型だと思います。また、優勝を狙える位置にもいると思うので、自分を信じて、指導者を信じて、練習を信じて、自分らしさを確立して、東京オリンピックでは、女子シングルス初となるメダルを取りたい、と思います」
電話取材であったが、電話からでも彼女の意志の強さが伝わってきた。「練習を信じ、指導者を信じ、仲間を信じる」。そして最後に自分を信じる。
自分にしかできないプレーを確立できた時、新しい「世界」が手に入るだろう。