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2020.11.11

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回想 それぞれの世界選手権 第5回〈全6回〉 田添健汰(2017年8月号から)

  • 全日本選手権でもペアを組み3回優勝に輝いた田添健汰選手(右)と前田美優選手

昭和22年創刊、800号を迎えたニッタクニュースのバックナンバーから編集部がピックアップしてお届けするページです。

 

2017年世界選手権デュッセルドルフ大会(個人戦)に、日本代表として出場した石川佳純森薗政崇伊藤美誠早田ひな田添健汰佐藤瞳の各選手が大会を振り返る「回想 それぞれの世界選手権」。
第5回は田添健汰選手(専修大、現・木下マイスター東京)です。
世界選手権混合複で、ベスト8入り。代表選手としての初舞台で得た経験を語ります。
*所属・年齢は当時のままです。
*ここに紹介の記事は、本誌記事を一部抜粋、編集しています。文中敬称略
本誌記事ページはこちら!

 

敗戦から見えた景色

全日本選手権混合ダブルスに5回出場し、3回の優勝。うち2回は、今世界選手権優勝の吉村真晴(名古屋ダイハツ/6月よりファースト)・石川佳純(全農)組に勝利しての優勝。国内トップの強さを誇るペアが世界に挑んだ。

 

シングルスでも、ワールドツアーで李尚洙(韓国)らに勝利。地力はある。長身から繰り出す両ハンド攻撃は威力があり、加えてダブルスを勝ち上がる上で絶対に必要な、細かい台上プレー、カウンタープレーを得意としている。

 

「まさか代表に選ばれると思っていなかったので、驚いていました。と、同時に、代表選手なのだから、『勝利』すること、結果が求められていることがわかりました。 
世界選手権までにたくさん練習しましたし、たくさんの経験を積むことができました。その経験も私にとっては大きかったです」
代表初選出。高校からペアを組む前田美優(日本生命)とともに、アジア選手権を戦う。強豪らに勝利し、初代表で銅メダルを獲得。初代表ということを考えれば、銅メダルでも、合格点がつけられるのではないだろうか。もちろん本人は満足していないだろうが。
世界選手権。緊張はそこまでなかった、と振り返った。
「もっと緊張するかな、と思っていましたが、大会前は特に緊張しなかったです。しかし、試合開始1時間前になると、急に足が重くなったというか、何かを意識するようになっていました。試合が始まれば良い感じでプレーできていたので大丈夫でしたが…」
初戦はチェコのペアにフルゲームで勝利。スコアこそ接戦であるが、内容は田添たちのペースだった。
「ヨーロッパのペアはラリー戦が強い。ボールに威力があるので、距離を取って入れにきた両ハンド攻撃でも威力がある。そしてコース取りもよいので、どういう風に攻めていいかわからなくなる時があります。
それがアジア選手権の時に感じたアジア選手に対する印象と、ヨーロッパ選手との差かなと思います。アジア選手は、台上が上手いというか、台上からの展開が多いので自分としてはやりやすいんです」

 

初めての世界選手権ながら緊張はなかったという

 

数センチ、数ミリの攻防
メダル決定戦。田添・前田組は、黄鎮廷・杜凱栞(中国香港)と対戦。1ゲーム目は4-8から挽回勝利した。2ゲーム目以降はリードするも、落としてしまい、結果、ゲームカウント2対4で敗戦。初出場となった世界選手権はベスト8という結果だった。
「内容は悪くなかったと思います。悪くなかっただけに余計に悔しいんです。6ゲーム目の9-9。相手のチキータレシーブがフォアサイドにくるのがだいたい読めていました。でもそれが取れなかった。それが今の実力だと思うんです。常にファインプレーをしないと世界のトップでは勝てない。そう感じました」
またこうも続けた。「ミックスダブルスは男子が頑張らないといけない。その面では何もできなかった。男子に攻撃されたら、パートナーは絶対に取れない。勝ち上がるに連れて、女子のレベル、ボールの質が良くなってきます。コースを外したり、ボール1個分であったり、数センチ、ミリ単位でボールのコースを変えていかないといけないと思います」
インタビュー時は冷静に話していたが、試合直後は珍しく、悔しさのあまり泣いていた。
ミックスダブルスは、日本の吉村・石川組が優勝。奇しくも、田添・前田組が全日本選手権で勝利しているペアである。
「全日本選手権とは全く違う吉村さん、石川さんでした。準決勝、決勝を見て、大事な場面で力を出す重要さ、そして、狙えるボールは、男女関係なく、狙っていかないといけない、と感じました。良い経験ができました」

 

初めての世界選手権で今後につながる大きな経験を得た

 

世界との差は「少し」
ミックスダブルスという種目で、田添は初めて世界選手権を経験した。
「世界選手権前はもっと緊張すると思っていたし、もっと差があるかな、と思っていました。でも、意外と差はないな、と思いました。でも、その差を埋めるのが大変なんです。
普通、フォアサイドに打つのは怖く、私はミドルとかに打ってしまうのですが、強い選手は最後はフォアサイドに打ってくることがわかりました。男子シングルス決勝を見ていても、樊振東選手がゲームカウント1対3となった時に、今までのバックハンド主体の戦術から、フォアハンド主体の戦術に変えて、ゲームオールに追いつきました。最後は馬龍選手が経験の差で勝ちましたが、あの決勝戦はワクワクしたというか、感動しましたね」
世界選手権を経験して一回り大きくなった田添。その経験は、どんな参考書よりも役に立ったはず。もう一度、新たな気持ちで「金メダル」を追う旅に出かける。

 

次回は11月16日に配信!
佐藤瞳選手が2017年世界選手権を振り返ります!