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2020.08.27

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インタビュー伊藤美誠 史上最年少全日本選手権3冠を達成!(2018年4月号から)

  • 平成29年度全日本選手権で3冠を達成

昭和22年創刊、800号を迎えたニッタクニュースのバックナンバーから編集部がピックアップしてお届けするページです。

 

平成29年度全日本選手権大会で、史上最年少3冠を達成した伊藤美誠選手。前回大会から変えたこと、成長したこと、そしてこれからの目標について語ったインタビューをピックアップ。
*所属・年齢は当時のままです。
*ここに紹介の記事は、本誌記事を一部抜粋、編集しています。文中敬称略
本誌記事ページはこちら!

 

全日本選手権3冠までの道程と、これから

 

すべてが東京体育館で噛み合った
昨年の全日本選手権(以下、全日本)ではまさかの初戦(5回戦)敗退。何かを変えないといけない、という思いで、ラバーを変更するなど、試行錯誤の日々が続いた。
しかし今回は、史上最年少の3冠を達成。平成26年度ジュニア優勝以来の全日本タイトルは、自分が進んできた道が正しかったことを証明し、より高く、より大きな次の目標を伊藤美誠にもたらした。
打ってよし、守ってよし。ラケットに当たれば、得点になるのではないかというほどの出来。平成29年度全日本の伊藤のプレーは、絶好調であった。
上位進出を期待された前回は初戦敗退の悔しさを味わった。
「昨年は優勝したい、という気持ちが強すぎて空回りしていたかもしれません。ですので、今年はあまり上を見ないで、1試合ずつ目の前の試合を全力でプレーしました。その結果優勝出来たと思います」と伊藤は優勝を振り返る。

 

苦しい時期に感謝したい
女子単・複、そして混合複の優勝。史上最年少の3冠達成。しかしここまでの道のりは険しかった。
2016年リオ五輪でメダルを獲得した伊藤。その活躍は素晴らしかった。しかし、以後約1年、伊藤は苦しんでしまう。
「自分のスタイルを見つけるのに1年かかりました。何かを変えないと自分を変えられない。そこで(フォア面を)粘着性中国製ラバーに変えることにしました」
粘着性ラバーは、現代の主流となっているテンション系ラバーと違い、弾みが劣る。スピードは出ないが、スピンの効いたボールが打ちやすく、回転の変化でミスを誘える。しかし、弾みが劣るので飛距離を出したければ、自分自身の持つ『力』で勝負しないといけない。
「美誠はもともと感覚が抜群に良い選手。弾みの良いラバーであると、手打ちでも入ってしまいます。それが自分のスタイルを見つけるのに時間がかかる要因だったかもしれません」と松崎太佑コーチは話す。
伊藤は、この「粘着性」に変えたことが良かったとも話す。
「粘着性ラバーに変えたことで、身体をしっかりと使えないと、良いボールが打てないことがわかりました。ラバーを変更したことで、基本を再確認できました。また、私は、対戦相手の研究をする時に、特に異質ラバーの場合は、一度対戦相手と同じラバーを用意して、どういう変化が出るのか、など球質を確認します。それと同じ感覚で、粘着性ラバーを使ったことで、中国選手の特徴も理解出来ました。
今は、粘着性ラバーを使っていませんが、ラバーを変えて基本を確認出来たこと、これが今の好調の要因だと思います」

 

連戦の疲れも見せず勝ち上がった

 

ライバルがいるから今の自分がいる
17年末。仙台で行われた世界選手権ハルムスタッド大会国内最終選考会で、伊藤は優勝し、日本代表に内定した。
「選考会で優勝出来たことと日本選手との対戦に慣れることが出来たことは全日本での優勝の要因の一つになりますね」と笑顔で話す。
卓球という競技は、技術はもちろん、メンタルにも大きく左右される競技である。
今回の伊藤は、技術、メンタルが充実していた。彼女自身も、選考会での優勝、混合複での優勝が好調の要因だった、と話す。
「テレビで『ゾーン状態である』と解説されていることを後で聞きました。自分でもそう思います。本当に調子が良かったと思います。
でも今の日本のレベルは高く、今日試合をしたら先日のメンバーに勝てるかは分かりません。それぐらい日本選手の実力は拮抗しています。気を抜かず、今日は今日、明日は明日、と練習に励むことが大切です。ライバルがいなかったら、自分は絶対にここまで来ていないし、絶対にここまで成長していないと思います。
当然みんな厳しい練習を積んで、もっと成長してくると思います。ここが勝負だと思って、一番を目指してやっていきたいと思います」
大会で良い成績を出すと、少し休憩する癖がある、と松崎コーチは話してくれた。しかし今回のインタビューで、上へ上へと目指す姿勢を感じ取ることができ、「休憩」という雰囲気は伊藤選手からは微塵もなかった。
この秋には、国内での熾烈な東京五輪代表枠争いが始まる。「努力」を覚えた天才・伊藤美誠の活躍が楽しみだ。