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2020.10.28

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回想 それぞれの世界選手権 第2回〈全6回〉 森薗政崇(2017年8月号から)

  • 長年のペアで培ったコンビネーションで、男子ダブルス準優勝を飾った森薗政崇選手(左)と大島祐哉選手

昭和22年創刊、800号を迎えたニッタクニュースのバックナンバーから編集部がピックアップしてお届けするページです。

 

2017年世界選手権デュッセルドルフ大会(個人戦)に、日本代表として出場した石川佳純森薗政崇伊藤美誠早田ひな田添健汰佐藤瞳の各選手が大会を振り返る「回想 それぞれの世界選手権」。
第2回は、男子ダブルスで準優勝に輝いた森薗政崇選手です。
ダブルスのパートナーである大島祐哉(木下グループ)選手とともに、前回の蘇州大会の悔しさをバネに、いかに試合に備えたか、そして中国ペアとの試合を振り返ります。
*所属・年齢は当時のままです。
*ここに紹介の記事は、本誌記事を一部抜粋、編集しています。文中敬称略
本誌記事ページはこちら!

 

2年前から見えたモノ

 

「1試合ずつ全力でプレーしよう」とパートナー・大島祐哉と話して臨んだ今大会。長年組んできた経験が花開いた。挑戦はこれからも続く。

 

失意だった。平成28年度全日本選手権(2017年1月)。優勝を目指した男子シングルス。まさかの初戦敗退。早々に会場から姿を消した。それでも大島と組むダブルスでは、国際大会で活躍。「ダブルス」では結果が出るだけにもどかしい日々が続く。
最高位では21位だった男子シングルス世界ランキング(2015年8月)も気が付けば、63位(2017年5月)まで落ちてしまった。それでも4月に行われたアジア選手権では、混合ダブルスで銀メダル、男子ダブルスでもベスト8入り。結果を残した。

 

1試合ずつ全力でプレー
モチベーションは高かった
『今大会の目標は?』大きな大会前に、メディアが必ず質問するフレーズである。しかし森薗たちは特に目標を定めていなかったそうだ。
「1試合ずつ全力でプレーしよう。ただそれだけを大島さんと話をしていました。倉嶋監督、田㔟コーチからも『金メダルを目指せ』と良い意味で発破をかけられていました。そういう意味では毎日の練習が真剣で、モチベーションは高かったです。でも今振り返ってみると、試合になったら勝ちたいということを意識してしまって、準々決勝のチャイニーズタイペイ戦は、メダルを意識しすぎて、硬くなってしまっていましたね」
ダブルスはコンビネーションが重要である。しかし、意外にも2人は遠征先で同じ部屋に泊まることになっても、特に会話を交わすことはないという。しかし試合になると、次はどうする?など、戦術的な会話が増えるという。
「長年ペアを組ませていただいているので、こういう場面ではこういうことをしてくれる、など技術的な部分は把握しているので、相手がこういうことをしてきているから、こうしようとか、戦術的な会話が多いです。
また、世界選手権は特にそうなんですが、ゲームカウント3対0でリードしていても、1ゲーム取られたらわからなくなるし、1本でも取られたら流れが変わるケースがあります。お互いに『ここから集中だよ』ってフレーズが多いと思います」

 

高いモチベーションで試合に臨んだ

 

経験。2年前の2015年蘇州大会は、中国ペアに、マッチポイントを取りながら、逆転負けを喫した。その経験は大きく、あの1本があったからこそ今があるとも話す。
「2年間ずっとワールドツアーに出させていただいた。長い時間ペアを組めたことで、ペアリングが良くなっていたと思う。
蘇州大会の時は、マッチポイントを取っていたこともあるので、前回の方が良い試合だった、という見方が大半かもしれませんが、自分たちからしたら、今回もあの時と同じぐらい勝つチャンスがあったと思う。数字では表せないんですけど、あそこの1本が取れていたら、と思うシーンがたくさんありました。実際に落としたゲームは全て先に9本取っているんです。しかし、そのシーンで1本を取らせてくれない、簡単にミスをしない。中国って凄いです」

 

決勝では中国ペアと互角以上に戦った

 

差は縮まっている。しかし土壇場の質の高さは見習う必要がある
ダブルスで対戦した中国ペアの感想を聞いてみた。
「樊振東選手のレシーブではなく、ラリー中の身体を入れてから繰り出すミドル前、バック前のチキータ攻撃。1本もミスはしないし、質が高い。許昕選手は、中陣からの重いフォアハンドドライブ。中国との差はたしかに縮まっていると思うのですが、土壇場での集中力、個人の技術、質の高さは見習わないといけません。
ダブルスだけで言えば、私のチキータレシーブはまだまだ効果的だな、と感じました。ただこれからは研究をされて、対応してくると思うので、進化する必要があると思います」
これからさらに活躍するために必要なことも質問をしてみた。
「体力的、肉体的なことは、体重比率から考えると、中国と大差はないと思います。男子シングルス決勝を見て感じたことは、自分とはプレーの質が全く違うな、ということでした。きっと現実ではありえないピッチで練習しているのだと思います。」
近頃取り組んでいる練習は、メンタルトレーニング、だそうだ。
「メダルはとれたけど、これでいいのかと不安になる。結局その不安が収まるのは試合で勝つこと。どうやって試合で勝てるのかを練習で考える」
明確な目標を持つことも、落ち込まないために必要なことだ、とも話してくれた。
目標を持つこと。目標に向かって努力することは困難が多く、厳しい道が続く。森薗の挑戦がまた始まる。

 

次回は11月2日に配信!
伊藤美誠選手が2017年世界選手権を振り返ります!