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2021.09.21

#RESULTS

「水谷選手とだからこそ乗り越えられた」伊藤美誠 オリンピックを振り返る(第1回)

世界中の耳目が集まった東京2020オリンピックで、卓球・混合ダブルスの頂点に立った伊藤美誠。

団体戦で銀メダル、シングルスで銅メダルと、出場した全ての種目でメダリストとなり、存在感を示した。

絶妙なコンビネーションを発揮した水谷隼選手との混合ダブルス、中国・孫頴莎に阻まれたものの僅差に迫ったシングルス団体戦。
大会を振り返る伊藤選手の肉声を、3回に分けてお届けする。

(聞き手)ニッタクニュース編集 前原麻芳(まえはら あさほ)
Photo by ITTF

 

 

■伊藤美誠 ITO Mima プロフィール

2000年10月21日生 静岡県磐田市出身

所属 スターツ

戦型 右利き シェークハンド攻撃

伊藤美誠オフィシャルサイト

 

 

――この度はメダル獲得おめでとうございます。先ずは、混合ダブルスからお話をうかがいます。オリンピック新種目ということで、どのような気持ちで臨んだのでしょう。

伊藤 「オリンピックでは新種目ですが、全日本選手権大会や国際大会では何度も経験してきました。水谷選手とのペアリングでもいろいろな大会に出場しているので、新種目という実感はありませんでした。ただ、オリンピック3種目の中で、特に混合ダブルスは金メダルのチャンスが大きいと思っていました。代表枠は各国・地域1ペア。今まで中国代表の許昕・劉詩雯選手のペアとは何度も対戦してきて、勝ちそうな試合もありました。自分たちの力をしっかり出し切れば、勝つ可能性、金メダルを取れる可能性はあるという想いでやってきました。当然、他種目同様、混合ダブルスでも、中国以外のチームも強く、どこが勝ってもおかしくないというレベルなので、気を抜けない状態でした」

 

――中国ペア以外も確かに強かったですね。準々決勝、ドイツ戦は、ほんとうに歴史に刻まれる大逆転だったと思います。劣勢の場面では、どのような心境だったのでしょう。

 

水谷隼/伊藤美誠  4(8,-5,-3,3,-9,8,14) フランチスカ/ソルヤ(ドイツ)

 

伊藤 「フランチスカ・ゾルヤ選手のペアとは世界選手権大会でも、森薗政崇選手(BOBSON)と組んで対戦した、本当に実力のあるペアです。ITTFツアーには、あまり参加がないので、対戦機会は少ない。水谷選手とのペアとしては、初対戦。相手が分からないという状態なので、自分たちの力を出し切ることを大事にしようと試合に入りましたが、最初は難しかった。身長がすごく高くて、巧さもある。そういうタイプとの対戦は、普段少ない。追い込まれてしまいましたが、ここで何もしないで負けるよりは、出し切りたいなという思いがありました。2-9から挽回した最終ゲームでは、水谷選手が『大丈夫』と声をかけ続けてくれました。ふだん、そういうことを一言も発しないので正直うれしかった。そして、まだまだ諦めていないぞという気持ちが伝わってきて、私もついていこうと思えたのです。自然と、私たちのペースになってきたかなと思います」

 

――声掛け、コンビネーションが大きかったのですね。逆転できた要因は他にもありますか。

伊藤 「大きくリードされていたので、逆にすごくリラックスできたこともあります。肩の荷がおりて、何でもできるようになって、いろいろなことに挑戦しました。ここからは最後まで、サービス・3球目、レシーブ・4球目くらいの短いラリーで完結したと思います。身長が高い選手に対してラリーを長引かせると、上から打たれて不利になります。短いラリー本数で決めに行くことができたのがよかったかなと思います」

 

――ジュースになり、最後はアップサービスで決めました。このゲームでは初めて出したサービスでしたが、ここで出そうと決めていたのですか。

伊藤 「ジュースになった後、ずっと相手に先取されて、何度もしのぐ感じでした。ようやくリードした2回目のマッチポイントで『思い切っていくしかないよね。ロングにしよう(水谷)』『長いサービス行くね(伊藤)』みたいな感じで、初めてそこで意見が一致しました。いやー、ここまで組んできて、心が一致した瞬間、そこはすごいすっきりしましたね」

 

――ほんとうに気持ちのよいサービスエースが決まりました。

伊藤 「狙いどおりのミスの仕方で、気持ちよかったですね。決め技のサービスが最後にあってよかったなと思いました」

 

 

 

――準決勝の対戦相手は、混合ダブルス世界ランキング1位のチャイニーズタイペイペアでした。戦術と勝因は。

 

水谷隼・伊藤美誠 4(9,-6,9,6,6)1 林昀儒・鄭怡静(チャイニーズタイペイ)

 

伊藤 「このペアは、一人一人の実力が高く、しかも、しっかり練習を積んできていると、すごく感じました。二人ともアグレッシブなスタイルで、鄭怡静選手は男性のように力強く、男子ペアと対戦しているような感覚になります。林昀儒選手も若いので面白い卓球をします。私は、チャイニーズタイペイの選手との試合になると、すごく自由に楽しく打ち合えてうれしい気分になります。今回も、すごくいい状態で、リラックスして試合に臨めました。準々決勝で、ああいう苦しい場面を乗り越えたからこそ、よけいにそうした心境になれたのかもしれません」

 

――良い流れで決勝に臨み、卓球日本初の金メダルを獲得しました。

 

水谷隼・伊藤美誠 4(-5,-7,8,9,9,-6,6)3 許昕・劉詩雯(中国)

 

伊藤 「混合ダブルスを全勝で終わることができた。それも、最強の中国ペアに勝って、終わることができた。優勝できたことがすごくうれしかったです。私自身はどの試合も、全部勝ちたいと思っています。オリンピックであれば尚更、出場種目全てで優勝したいという気持ちがすごく強い。混合ダブルスも、1戦1戦勝っていけば、優勝に繋がっていくという想いでやっていました。決勝はすごく思い切ってできました。2ゲーム先取されましたが、私のボールが入れば絶対いけると思えて、すごくリラックスしていました。3ゲーム目をとれたことで、展開がガラッと変わった。相手優勢の流れだったのが、急に私たち優勢の流れにできた。それがすごく大きかったと思います」

 

――最終ゲームは大量リードでした。展開を振り返っていただけますか。

伊藤 「許昕選手が、もう完全にびびっていましたね。『え、そこでミスするの⁉』みたいなことも何回かありましたし、身体が振り切れていませんでした。普通なら、打球軌道も高いし、ボールが飛びこんでくる感じです。しかし、いつもと全然違う。最初の2ゲームとも、ボールがいつもより飛んでこない感じがあった。あっ、もしかしたらこれは返していけばいけるかも、怖くないと思いました。2ゲーム先取されましたが、全然怖さがなくて、ほんとうに余裕をもってプレーできました。追い上げていくと、許選手は追い詰められている様子がありありとして、もっと振れなくなっています。そこで『許昕選手狙いでいこう』と決めました。だから、水谷選手も私も、許選手の返球に対して上から行けるというすごくいい状態で展開して、最終ゲームは終始こちらのペースで、ババババッと連続得点できました」

 

 

――準々決勝同様、最後はサービスエースが決まりました。許昕選手は下に落としましたね。アップサービスに見えたのですが。

伊藤 「許昕選手が最後まで振り切れていないので、このサービスを出したら絶対に決まると自信をもって出しました。サインはアップだけど、許選手は、こすりそこねて下に落としたと思うんです」

 

――ラリーの合間に、伊藤選手と劉詩雯選手とが、互いに微笑みを交し合うようなシーンがしばしばありました。

伊藤 「そうです、そうです。決勝の雰囲気が楽しくて、ニコッとしながら視線を交わす感じです。私は二人の顔を見ていましたが、劉選手には余裕がありました。探り合いというか、互いにしっかりと相手を見ながら試合ができていました。女性は強いな、と感じました」

 

――パートナー水谷選手はどのような存在ですか。

伊藤 「今まで、水谷選手と組んで優勝できなかった大会があります。他の選手と組んでいれば優勝できたかもしれないなと思ったことは何回もありました。水谷選手の調整方法は、独特。全ての試合に勝ちたいという私には理解できないこともありました。年齢が12歳離れているから練習の仕方も違う。でも、最終的には大きな舞台で勝つということをとても大事にしていたのだと、今だから分かります。水谷選手と組んでいたからこそ、ドイツ戦も乗り越えられたし、最後決勝で勝てたのだと実感しています」

 

 

 

「試合中に感じたし、終わってからも感じていること」第2回は9/22 19:00配信!