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2021.09.22

#RESULTS

「試合中に感じたし、終わってからも感じていること」伊藤美誠 オリンピックを振り返る(第2回)

東京2020オリンピックで、卓球・混合ダブルスの頂点に立った伊藤美誠。
シングルスでも、オリンピック日本女子初のメダル獲得を果たしたが、その旨に去来した思いとは...。
大会を振り返る伊藤選手の肉声をお届けする(第2回/全3回)。
(聞き手)ニッタクニュース編集 前原麻芳(まえはら あさほ)
Photo by ITTF

 

――シングルスに入ると、初戦から危なげない内容で勝ち上がっていきました。惜しくも準決勝で、孫頴莎選手(中国)に敗れました。孫選手は、パワー&スピードの豪快な連続攻撃という本来のプレースタイルではないように見えました。その戦術をどう見ましたか。

 

伊藤美誠 0(3,9,6,4)4 孫頴莎 (中国)

 

伊藤 「孫選手は、自身のスタイルよりも、私の不得手を引き出すことを優先する戦術をとってきました。本来の孫選手の攻撃的なプレーであれば、私もすごくすっきりプレーできるし、それで何回か私が勝っています。孫選手の頭の中には、その時の負けた印象が強く残っていたのかもしれません。それで、強さというより巧さを発揮するという孫選手らしくないプレーをしてきました。最終的にはその巧さでやられました。孫選手のプレーの幅の広がりに対して、私自身のプレーを出し切れませんでした」

 

 

――その後、同日の3位決定戦は、ユ・モンユ選手(シンガポール)に4対1で勝利。日本女子としては、五輪シングルス初のメダリストになりました。

 

伊藤美誠 0(-6,8,7,7,6)4 ユ・モンユ(シンガポール)

 

伊藤 「孫選手との試合を終えてから、もっと出し切りたかった、やり切りたかったという気持ちを引きずっていました。夕方の3位決定戦までの間に、チームのスタッフや母と過ごす時間があり、自分の素に戻ることができ、皆がすごく明るく接してくれたので、リフレッシュして気持ちをプラスに切り替え、3位決定戦に臨むことができました。
ユ選手は、1回戦の鄭怡静選手を手始めに、強豪を連破して勝ち上がってきました。この大会に向けた調整が上手くできて、調子もすごくいいという印象でした。その選手に勝つことができて、自信になりました。
もちろん、うれしかったのですが、自分が目標にしていたのは金メダルだったので、悔しさが断然強くて、正直なところ素直には喜べないという気持ちはありました。
ただ、勝って終わることがすごく大事だと思っているので、シングルスの最後に勝つことができてよかったと思います」

 

 

――勝利で終えたシングルス。上手に団体戦に切り替えられたわけですね。
伊藤 「シングルス期間中は、初日から2試合というタフなスケジュールで、試合後の睡眠時間が3時間半しかとれないという日もある中、たくさんの方々に支えらえ、何とか回復しながらやり遂げることができました。3位決定戦の日は、帰りが深夜2時半と、とても遅くなりましたが、勝って終わることができたおかげで、気持ちはいい方向に向かったので疲れがドンと出てきませんでした。団体戦は2日後なので、やっと睡眠時間をたくさん取れると思いました。実際、十分に休養をとることができたおかげで、団体戦には、すごく良い状態で臨むことができました」

 

――団体戦は準決勝までのチーム成績は全て3対0。伊藤選手も香港戦・杜凱琹選手に1ゲームを落としただけでした。快進撃でしたね。

 

1回戦 日本 3-0 ハンガリー (2番)伊藤美誠 3(2,6,6)0 ドラ・マダラス
準々決勝 日本 3-0 チャイニーズタイペイ (2番)伊藤美誠 3(2,9,8)0 鄭怡静
準決勝 日本 3-0 香港 (2番)伊藤美誠 3(-9,9,1,7)1 杜凱琹

 

伊藤 「団体戦は5ゲームマッチなので、自分のプレーをしたら勝てる。自信をもってプレーができました。また、5ゲームの短期決戦だからこそ1ゲーム目は絶対とりたいという想いで臨んだので、出足、入りがすごくよかったです。香港の杜凱琹選手も、シングルスでは中国選手以外には無敗、団体戦もそこまで全勝。自分自身を出し切ろうという想いで臨み、勝つことができ、試合を楽しむこともできました」

 

 

 

 

――いよいよ決勝戦、孫選手と再び対戦となりました。接戦になりましたが…。

 

決勝 日本 0-3 中国 (2番)伊藤美誠 1(-8,-5,3,-3)3 孫頴莎

 

伊藤 「絶対にシングルス同様にやってくると思い、準備はしていました。シングルスの時よりも、しっかり入れること、決めに行くという気持ちで臨みました。しかし、決めに行っても決めに行っても、一本どころでなく2本、3本と返ってきました。私としてはいつもより攻めているつもりでも、孫選手は余裕があるのか、楽に返球しているように感じました。シングルスの時よりは、いろいろできていたとは思います。しかし、やりづらさや工夫が少なかったのかなと思います。
もっとできる幅を広げて、もっといろいろなことを出せるようにしたいと、試合の最中も感じたし、終わってからも感じています。
技術があるから戦術もどんどん広がっていくと考えています。
練習して技術の実力をつける。それではじめて戦術を立てられると思う。
たくさんたくさん、いろいろな技術を磨く。磨くだけでなく、接戦の緊張感の中で使えるように一つひとつの技術を高めていけたらいいなと思っています」

 

■伊藤美誠 ITO Mima プロフィール

2000年10月21日生 静岡県磐田市出身

所属 スターツ

戦型 右利き シェークハンド攻撃

伊藤美誠オフィシャルサイト

 

「だれにもできない難しいことをやり遂げたい」第3回に続く