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2020.10.09

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【世界選手権おもしろ史15前編】「日本は世界チャンピオンをはずし、新人補強で6種目に優勝」 (2009年5月号から)

  • 男子団体5連覇の日本。右から長谷川喜代太郎監督、荻村、成田、村上、星野

昭和22年創刊、800号を迎えたニッタクニュースのバックナンバーから編集部がピックアップしてお届けするページです。


 

2009年5月号世界選手権横浜大会開催記念号から、故・藤井基男氏・著の「世界選手権おもしろ史」をお届けします!
※ここに紹介の記事は、原文を一部抜粋、編集しています。敬称略

 

QアンドAとエピソードでつづる世界選手権おもしろ史

 

第25回大会1959(昭和34)年3月27-4月5日 ドルトムント(西ドイツ)

世界チャンピオンをはずし新人補強の大英断で、日本6種目に優勝

男子は4名中3名が新人で5連覇

――日本は男女とも4名ずつの選手をドルトムントへ送ったが、このうち荻村、女子の江口・難波以外は5名の新人に切りかえるという大英断で成功しているね。

……前年のアジア競技大会が東京で行われたが、日本は男子団体でベトナムに敗れて3位という信じられない出来事が起こった。ベトナムはマイバンフォア、トランカンドク、レバンチェットというメンバーで、日本は世界4連覇のベストメンバーでのぞんだが、世界チャンピオンの田中利明が3敗したために5対3で敗れた。田中は試合前にラバーを二度変えるなど、いろいろ試みたが不調で涙を呑んだ。

「新人に切りかえるべきだ」「いや、新人では世界で勝てない」などの議論が出たすえに、日本卓球協会は翌1959年のドルトムント大会の代表から田中をはずし、村上輝夫、星野展弥・成田静司・松崎キミ代・山泉和子の新人を補強した。

 このメンバーじゃ、1種目に優勝できれば良いほうだ――などと書かれたり言われたりしたが、ベテランと新人が一体となって伝統を守ると共に、新しい力の台頭もあって、日本は史上最多の6種目に優勝した。

――実力が落ちたと見れば、世界チャンピオンでも代表からはずすという厳しい選手選考が成功したわけだね。中国も、80年代に世界チャンピオンをはずし伸びざかりの新人に変えて世界選手権やオリンピックで優勝している。日本の前例を参考にしたのかどうか知らないが、新人の成長を正しく公平な目で見つめ大胆に起用することは大切なことなんだね。

……決勝戦もトレパンをはいてプレー(当時のルールでは許された)した容国団が男子シングルスに優勝し、中国に初タイトルをもたらしている。この前年からナショナルチーム制度を採用し、その効果が出たものと思われる。

女子シングルスは「新人の松崎が優勝するかもしれない」という長谷川喜代太郎監督の予感が的中した。これから63年までの4年間は、松崎が“実力ナンバーワン”として活躍することになる。

 

……つづきは10/14配信の後編で!

 


藤井基男(卓球史研究家)

1956年世界選手権東京大会混合複3位。引退後は、日本卓球協会専務理事を務めるなど、卓球界に大きく貢献。また、卓球ジャーナリストとして、多くの著書を執筆し、世に送り出した。特に卓球史について造詣が深かった。ニッタクニュースにおいて「夜明けのコーヒー」「この人のこの言葉」を連載。

本コーナーは藤井氏から「横浜の世界選手権に向けて、過去の世界選手権をもう一度書き直したい」と本誌編集部に企画の依頼をいただいた。執筆・発行の14日後、2009年4月24日逝去