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2020.12.22

#INFO

【世界選手権おもしろ史26】「日本で5度目の開催となった大阪大会。中国が死闘を制して史上3度目の全種目制覇」 (2009年5月号から)

  • 男子単新チャンピオンとなった王励勤(中国)

  • 男子団体準決勝のラストで金擇洙に勝利した劉国正(中国)

  • 2大会連続女王となった王楠(中国)

  • 3位入賞で18年ぶりのメダルを獲得した日本女子

  • 武田明子(左)・川越真由組は、26年ぶりに女子複でメダルを獲得

  • 初の40ミリボールが採用。公式球にニッタクが選ばれた

昭和22年創刊、800号を迎えたニッタクニュースのバックナンバーから編集部がピックアップしてお届けするページです。


 

2009年5月号世界選手権横浜大会開催記念号から、故・藤井基男氏・著の「世界選手権おもしろ史」をお届けします!※ここに紹介の記事は、原文を一部抜粋、編集しています。敬称略

 

QアンドAとエピソードでつづる世界選手権おもしろ史

 

第46回大会2001(平成13)年4月23-5月6日 大阪市(日本)

大阪大会は7種目開催の最後で、40ミリ球使用の最初。続出したエキサイティング・ラリーのベストワンは?

「日本の快挙と残念」とは?

――日本で5度目、西日本では初めての開催だった。

……121の国と地域から1347名の選手団の参加を得て、大阪市中央体育館*を主会場(3会場)に熱戦が繰り広げられた。

*2021年全日本選手権大会が行われる会場

 

歴史に残る中国対韓国戦(男子)

――第1回大会から直径38ミリのボールが使われてきたが、40ミリに変えたのは、なぜ?

……主催の国際卓球連盟には、二つのねらい(目的)があった。第1は打球のスピードを少し遅くして、ラリーがもっと続くようにしよう、というもの。第2は、観客やテレビ観戦者に、ラリーをもっと見やすくしようというもの。

――確かに、見やすくなったし、いいラリーが続くようになったね。

……エキサイティング・ラリーの代表は、男子団体準決勝の中国対韓国だった。中国は孔令輝・馬琳・劉国正。韓国は金擇洙・呉小垠・柳承敏。呉が一世一代の当りで劉と孔を破り、二対二となり、ラストの劉対金に勝負が持ち込まれた。16-21、24-22、25-23というスコアが示すように、手に汗にぎる大熱戦。最終ゲームを金が20対17とリードした時には、韓国の初優勝なるかと思われたが、劉は信じられないような粘りと底力を発揮。ついに逆転勝ちをした。世界選手権の歴史に残る名勝負で、李富栄・中国卓球協会副会長(元総監督)は「私の卓球人生40年の中で、ナンバー1の試合」と記者会見で語った(『ニッタクニュース』573号)。

 韓国戦で逆転勝ちした中国が史上3度目の7種目完全優勝を達成。王励勤(男子)が新しい時代のチャンピオンになった。

 

日本の快挙と残念

――日本の戦いぶりは?

……女子が団体とダブルスで3位に入った。団体入賞は83年東京大会以来18年ぶりのこと。羽佳純子・高田佳枝・小西杏・西飯由香・岡崎恵子のメンバーで戦った。ダブルス3位の武田明子・川越真由組は、ジュニア時代からの8年間のコンビがよく、韓国ペアとバトルフィ・トート組(ハンガリー)を破った。

 これに対して男子は13位という残念な結果に終わった。前年、偉関晴光・松下浩二・田崎俊雄・遊澤亮・渋谷浩で3位となったときの主力が残っており期待されたが、イタリア戦でつまずいてから敗戦の一途をたどった。

 

大会運営は“ベストワン”

――大会運営は、どうだったの?

……秋篠宮殿下を名誉総裁にいただき、大阪市(磯村隆文市長)・日本卓球協会(江崎勝久会長)で組織委員会を構成。実務は事務局と早田巖大阪卓球協会会長代理がつとめる事業委員会を中心にすすめられた。これに前大阪卓球協会会長の江口冨士枝をはじめとする市民中心の4640名のボランティア協力があった。シャララ国際卓球連盟会長が、「運営はベストのもので、すばらしかった」と、最終日の記者会見で語った。

 

●こぼれ話

“元中国選手”の活躍めだつ

 日本の羽佳・高田をはじめ、中国出身選手の活躍がめだった。男子では、日本を破ったイタリアのエース・ヤンミン、団体5位になったオーストリアの陳衛星とチャン、女子では単ベスト16に入った陳静(チャイニーズタイペイ)などなど。

 国際卓球連盟(ITTF)は、2008年の総会で、「ITTFに登録するときの年齢が21歳以上の場合、移籍選手の世界タイトル大会への出場を認めない」と決定した。世界タイトル大会には、世界選手権、ワールドカップ、ワールドチームカップがある。この決定により、「移籍選手の力を借りて世界の上位ねらい」という傾向が大幅にへるものと考えられる。

 

各種目の優勝

男子団体:中国(孔令輝・馬琳・劉国正ら)

女子団体:中国(王楠・張怡寧ら)

男子単:王励勤(中国)

女子単:王楠(中国)

男子複:王励勤/閻森(中国)

女子複:王楠/李菊(中国)

混合複:泰志戟/楊影(中国)

 


藤井基男(卓球史研究家)

1956年世界選手権東京大会混合複3位。引退後は、日本卓球協会専務理事を務めるなど、卓球界に大きく貢献。また、卓球ジャーナリストとして、多くの著書を執筆し、世に送り出した。特に卓球史について造詣が深かった。ニッタクニュースにおいて「夜明けのコーヒー」「この人のこの言葉」を連載。

本コーナーは藤井氏から「横浜の世界選手権に向けて、過去の世界選手権をもう一度書き直したい」と本誌編集部に企画の依頼をいただいた。執筆・発行の14日後、2009年4月24日逝去