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2022.02.28

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「卓球を通じて人と人のつながりの大事さを認識」日本の肖像 岡本一郎(2017年10月号から)

ニッタクニュースの人気コーナー「日本の肖像」から編集部がピックアップしてお届けします。

日本の肖像とは、各界でご活躍されている卓球人にご登場いただき、卓球を通じて学んだこと、その経験を生かした成功への道を語っていただくコーナーです。

第4回は2017年10月号より、岡本一郎さんです。

※所属・年齢・事実は掲載当時のまま

 

文・写真■栗山尚久

監修■沼田一十三

 

日本軽金属ホールディングス株式会社 代表取締役社長

岡本 一郎(おかもと いちろう) 

 

幼少期から高校までを岡山県倉敷で過ごした。雨が少ない地に用水路が発達して水車が散在する風景の中で「夏は真っ黒になって蛍や天牛(カミキリムシ)をとっていた」という活発な子供だった。小学時代は毎日野球に明け暮れた。そして、高校から大学まで熱中した卓球から得たものは・・・。日本有数のアルミニウム総合メーカー「日本軽金属ホールディングス株式会社」代表取締役社長の岡本一郎さんに聞いた。

 

目の負傷が原因で野球を断念。「痛くなさそう」なので卓球を

野球少年だった岡本さんは、中学でも迷うことなく野球部に入部。しかし、ある日、目を負傷し入院生活を余儀なくされた。退院後、野球をしてみるとボールを取り損ねて顔にぶつけた。ケガの影響から遠近感が劣化したのだ。「こりゃ駄目だな」と、野球を断念。大きな球ならとバレーボールもやってみたがうまくいかず、身体にぶつかる痛みに耐えかねて文化部に転向した。

そんな頃。トタン波板壁の決してきれいとは言えない卓球場が自宅近くで繁盛していた。「30分で百円くらいだったかな。小遣いが貯まると遊びに行こうぜと友人を誘って行くのが楽しかった」

県立倉敷青陵高に進学すると「高校生活を満喫するには、スポーツがあってこそ」という思いが募った。しかし、目の心配もあり「いちばん痛くなさそうな種目を選ぼう」と卓球部に入部した。遊びで馴染んでいたことも背中を押した理由のひとつかもしれない。

 

何より楽しかった仲間との時間。鍛えた体力のおかげで京大合格

部員は各学年5、6人。県団体戦ベスト16というレベル。進学校ながら練習は毎日16~18時。「部活帰りにジュースを飲んだり、合宿で大騒ぎしたり。卓球を通じて知り合った仲間たちとの時間が何よりも楽しかった」。顧問の坪井克己先生は全国教職員大会準優勝の実力者ながら厳しさを強要しないことも、岡本さんの卓球との向き合い方にフィットしていたようだ。

中国の「前陣速攻」に憧れて、表ソフトでとにかく早く打つスタイルを目指した。「動画なんてない時代。卓球雑誌の打球瞬間だけしかない写真を真似ようとすると、意識し過ぎて力が入ってうまくいかない。流れの中での瞬間の姿なので、その前後のフォームが全く違うと分かったのはずっと後のこと。実際の試合を観るのがいちばん参考になりますね」と笑いながら振り返った。

進学校のご多分に漏れず、同校も2年秋で部活引退となるが、岡本さんは3年の冬になっても卓球を続けていた。目指す京大の3月受験一発勝負を控えた正月明け、卓球をしに行くところを「お前、何やってるんだ!そんな恰好で」と担任に見とがめられた思い出も。しかし、卓球で鍛えた体力が、追い込み勉強に貢献して見事合格を果たした。

 

当時は珍しかった中国式のマイラケットを手に笑顔

 

大学卓球のハイレベルに驚愕。仲間たちは大きな財産となった

「学生時代を充実させるには、真剣に取り組むものがほしい」と、京大でも卓球部に入部した。名物の新入生歓迎合宿には30人が参加。最終日の打ち上げトーナメント決勝を見て「国立でもこんなにうまいのがいるんだ」と驚いた。関西学生リーグ3部の京大で卓球三昧の生活が始まった。毎日15時過ぎから21時近くまで練習。「でも、うまくなれなかったなあ」と謙遜するが、全国国公立大学大会団体戦の準決勝の先鋒(せんぽう)で勝利したこともある。

卓球部仲間とは練習や授業以外でも多くの時間を共有した。後にキャプテンとなるK君とはドイツ語授業に四苦八苦。先生にねじこむ作戦も立ててやっと単位取得したのも懐かしい思い出だ。共に苦しみ、楽しんだ仲間たちが大きな財産となった。卓球を通じて「人と人のつながり」の大事さを認識し、人間社会の本質を学んだ。

 

職場の人たちの温かさに感動。「離婚よ!」がキッカケでマラソンを

「将来的に広がる分野」という理由で日軽金に入社したが、ここでも「人」に恵まれた。最初に配属された3交替の職場の人たちの温かさに感動し、その後も行く先々の人たちに支えられたと言う。社長となった今でも、卓球を通じて学んだ「学校は学問だけではない。会社は仕事だけではない。本当に大事なのは、周りの人や仲間たちと同じ方向を向いて進むこと。この会社に入って良かった、この仕事そして仲間と出会えてよかったと思えるように」と、「人」を重視した温かみのある職場の実現に力を入れている。

「みんなで真ん中を見て話そうよ」と岡本社長が若手社員5人を招いて行う座談会「座ファイブ」。会談後はお酒を酌み交わすことで更に距離が縮まるようだ。父母の働く姿を見てもらおうと、子供さんを会社に招く「ファミリー見学会」も設けている。

プライベートでは、「これ以上太ったら離婚」と仲の良い奥さんのひと言がきっかけで始めたジョギングが高じて、今はウルトラマラソンに取り組んでいる。フルマラソンも3時間台という本格派。「マラソンも楽しいけれど、卓球もまたやってみたい」と笑った。