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2022.08.10

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【インターハイ】 受け継がれる「ヨンテン」魂 ~真夏の偉業~

  • 四天王寺の伝統行事。選手全員での優勝記念撮影

涙と汗の一滴一滴が作り上げてきたインターハイへの流れ。時には練習をやめたくなった時もあったであろう。しかし彼女たちは、目標のために白球を追った。インターハイは、出場している、していない、勝敗などに関係なく、全ての高校生、関係者に、かけがえのない経験、大切な経験をもたらす。今年も、女子学校対抗の優勝旗に「四天王寺」の名が歴史に刻まれた。

 

優勝を支えた「2人」の3年生の存在

 

今年の四天王寺高校の3年生は、大藤沙月、横井咲桜、面田采巳、橋本萌の4名。インターハイのベンチに入れるのは7名と狭い。幾度となく全国大会で優勝している四天王寺高校であり、3年最後の夏だからと言って全員がベンチに入れるわけではない。

大藤、横井、面田はベンチ入りできたが、橋本はベンチから漏れてしまい、最後のインターハイをスタンド席で迎えた。橋本は、次に対戦する相手のビデオを撮影、選手が休憩するエリアにいるなど、裏方に徹し、チームの9連覇に貢献した。

面田は、2021年開催の全日本選手権ジュニアの部でベスト8、Tリーグにも登録されており、他校であればエース級の実力者である。今大会は、準々決勝の希望が丘戦ではトップに出場(勝利)、準決勝、決勝はラストに名前が書かれた。準決勝、決勝は、オーダー上の作戦であろうが、恐らく面田を後半に置いたということは、「後半に面田がいるから大丈夫」と、前半に出場する下級生が思い切りプレーできるような配慮であろう。

シングルスになると、自身は代表ではなかったため、同じ3年生である横井のベンチに入り、横井を支えた。横井が準決勝で敗れた時の、最後の握手がとても印象的であった。

▲左から、橋本、大藤、面田、横井

 

▲面田(右)は、横井のシングルスのベンチに入った

 

伝統校を支える2人のエース

 

大藤沙月、横井咲桜。この世代を代表するレベルの選手である。普段は笑顔が似合い、どこにでもいそうな高校生であるが、試合が始まると一変。伝統ある「四天王寺高校」のエースの表情に。負けが許されなく、しかも勝ち方、内容を求められる。「勝ってなんぼ」という言葉があるが、勝負事においての一つの真実であるが、伝統校にはその手の印象はない。

印象的なことがあった。2人でペアを組んだ女子ダブルス優勝直後のことである。決勝のスコアは3対1。1ゲームは落としものの優勝。2連覇であった。

2人も「(決勝の相手に)一番対策練習をしてきたが、試合になると上手くいかなかった」とインタビューで振り返り、四天王寺のスタッフは2人にさらに高いレベル(内容)を求め、大藤は涙を流した。

翌日、学校対抗準決勝で、昨日決勝で試合をしたペアと対戦。2人は反省を活かした戦術で、ストレートで勝利した。

迎えた最終日。シングルス・ダブルス・団体の3冠の可能性は、大藤、横井にしかなかった。しかし結果は、大藤が準優勝、横井がベスト4。優勝は同じ大阪府代表でライバルである赤江夏星(香ヶ丘リベルテ高)であった。

優勝以外を考えていなかった2人は、表彰式が終わると(別々に行われたが)、すぐに賞状、メダルを記念撮影にきていた両親に渡し、悔しさをあらわにしたのであった。

 

▲学校対抗で優勝を決め、笑顔の大藤・横井

 

▲試合前にゼッケンをつけあう2人

 

学校対抗9連覇という偉業

 

インターハイは雰囲気が違う。緊張からか卓球の調子が崩れてしまい、本調子のプレーができなかったり、体調を崩す選手も多い。しかしその部分も含めて「インターハイ」なのである。

「学校対抗で、四天王寺の連覇を止めるのは」と注目が集まったが、結果は、四天王寺が優勝。平成25年から続く優勝記録を『9』に伸ばした。もちろん歴代最長の記録である。

四天王寺と明徳義塾の決勝戦。四天王寺・2番の伊藤詩菜選手の意地をみた。1年生の伊藤は、準決勝で2番に起用された。善戦するも敗戦。常に勝利が求められるチーム。決勝戦は、伊藤は起用されても後半だろうと思っていたが、2番に起用された。伊藤の相手は、単複に起用されている青井と対戦した。燃えないわけはない。伊藤は1ゲーム目を先取。2ゲーム目こそ落とすが、3ゲーム目以降は、ギアを入れ替え、ボールに食らいつく。結果は、ゲームカウント3-1で伊藤が勝利。大きな1勝であった。試合後「伊藤の勝利が大きかった」とチームメイト、吉田監督は評した。

「優勝」という言葉は簡単かもしれない。しかし優勝に至るまでの道は険しく、困難しかない。そしてその優勝記録を9年間も続けることがどんなに大変なことかは当事者にしかわからず、想像がつかない。

インターハイが終わり、どのチームも3年生が抜け、1・2年生の新チームに変わる。恐らくどのチームも昨日までいた「3年生」の幻影と戦わなくていけない。

『変わらず、変わり続ける』を大切に、現状に満足せず、常に挑戦する気持ちを忘れず、どこまでも挑戦し続け、来年の夏が最高になるように準備をして、悔いの残らない夏が迎えられるように…。

 

▲学年に関係なくチームを応援。スポーツの素晴らしさ