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藤井 基男 卓球愛好家。著書に「卓球物語」「カットマン」「卓球 元気が湧く43の話」など多数。 |
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今回は、番外編である。 「この人のこの言葉」ではなく、「この人のこのプレー」を取りあげることにした。 両選手の大きな違いと共通点(変化プレー) 「この人」とは、九月の荻村杯ジャパンオープンで、ともにすばらしいプレーをした朱世赫(しゅせいかく)と福岡春菜(はるな)の両選手である。 このふたりのプレーには、大きな違いと大きな共通点がある。 違いから言うと、朱は台から少し離れた中陣附近で、バックカットとフォアハンドの強力ドライブを得意とする。 これに対して福岡は、台に近い前陣で、ショートやツッツキを多用し、攻撃チャンスはフォアハンドスマッシュというプレーを得意とする。 ![]() 共通点は何か。 ともに右ききのシェークハンド・グリップで、フォア面に裏ソフトラバー、バック面に粒高ラバーを張り、“変化プレー”を中心に戦うことである。朱の変化プレーには、よく切れるバックカットを土台としたカットそのものの球質変化(切ったり切らなかったり)と、バックはカット、フォアは攻撃という異なる技を組み合わせたプレー全体の変化とがある。 2003年の世界選手権で第2位になって世界の注目をあびたときには、猛烈に切れたバックカットを送り、相手のネットミスを誘う。 やっと持ちあげて、「打ちごろのドライブ」で返してくるところを、待ちぶせしてフォアハンド強打で得点するというプレーが多かった。フォアハンドはカットよりも攻撃を得意とする新しいタイプの“中陣攻守型”である。 福岡は、目を見はる変化サービスの名手である。日本の歴代選手のなかで、一番。 そして、粒高面でのショートやツッツキをまぜた変化プレーで得点をねらう。また、この変化プレーでチャンスをつくり攻撃を仕かける。 そういうプレーを中心にして今年の世界選手権(団体の部)で銅メダリストになっている。 ボルの強力・多彩な攻撃に、反撃チャンスをつぶされた朱 さて、荻村杯---。 大会第3日の九月二三日は土曜日とあって、また“愛ちゃん”が出るとあって、会場の横浜文化体育館は超満員。立ち見席券が2500円で売られていた。 朱は、男子シングルス3回戦でボル(ドイツ)と対戦。 残念ながら、日本の男子選手は、2回戦までに姿を消した。 ボルは、さすが世界ランク第2位の選手だけあって、朱のカットを、左腕からのドライブに強弱をつけながら巧みに攻めこむ。凡ミスがない。 加えて、朱が攻撃をまぜようとすると、速いドライブで攻める。または逆コースをついてくる。このため、朱としてはいいカットが入るのだけれども、もう一つの得意技である“フォアハンドの強力攻撃”による反撃チャンスがほとんどつかめないまま敗れた。 この日、福岡は女子シングルス3回戦で世界ジュニア・チャンピオンの丁寧(中国)を大接戦で破り、最終日(翌日)の準決勝進出を決めた。観客席からだけでなく、役員席からも拍手がおこった。 |
| 郭戦における福岡の勝ちゲームと完敗ゲームの戦いぶりの違い 準決勝で福岡は、世界ランク第3位の郭(中国)と対戦。 フォア・バックともに強力ドライブで攻める選手だ。 スコアは、次のとおりだった。 |
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完敗した第4第5ゲームの福岡の戦いぶりを見ると、第4ゲームは9-3と大きく離されるまで、三球目攻撃(スマッシュ)を1本も打っていない。 第5ゲームも「勝負あり」と感じられる8-2まで、三球目スマッシュを打っていない。 粒高面のショートやツッツキを多用する“変化プレー”中心に戦った(これを「第1の戦術」と呼ぶこととする)。だが、慣れられてきている。
落ち着いて福岡の変化を見きわめ、両ハンドの強力ドライブを連発して、9-3あるいは8-2とリードを広げたのであった。 途中で福岡が、変化プレーのあとにフォアハンド攻撃を試みたが、相手のドライブに回転がよくかかっているためであろう。 オーバーミスが多かった。 変化プレーで得点をねらう。変化プレーでチャンスをつくり攻撃をするーーという得意の戦い方(戦術)が通用しなくなった終盤であった。 これに対して、勝ちとった第2ゲーム(セット)と勝ちかかった第3ゲームにおける福岡の戦い方には、明らかな違いがあった。 (第1ゲームはメモを取らなかったので、はぶく) 第2ゲーム、5-6の競り合いで、スマッシュを決めた。 このゲームで福岡が見せた初めてのスマッシュ得点だった。 すると、このあとの変化プレーが効いて、郭にミスがつづき9-6と福岡がリード。 ここでまた福岡がスマッシュを決めて10-6とし、11-7で勝った。 つづく第3ゲームも、4-7で負けているとき三球目スマッシュを決めて5-7としたあと、相手に連続ミスが出て(変化プレーが効いて)7-7と追いあげた。 大接戦となり、9-10、10-11、11-12の瀬戸ぎわで三球目スマッシュを決めた。 見事な福岡の判断のよさと勇気と集中力の持続だった。13-14の最後の場面で、三球目強打をせずつないだところを、郭に攻めこまれて惜しくも勝機を逃している.... |
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(以下「ニッタクニュース12月号」に掲載)
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